1. ドル円(USD/JPY)の動向:3月4日の為替市場では、ドル円相場は乱高下しました。前日までの流れを受けて一時は1ドル=151円30銭前後まで上昇する場面もありましたが、その後米国の経済指標悪化をきっかけにドル売り・円買いが強まりました
特に、米2月ISM製造業景況指数の予想下振れやトランプ米大統領による「自国通貨安の国には関税を引き上げる」との発言でリスク回避の動きが広がり、円が買われました。その結果、ドル円は149円台半ばまで急落し、円高基調のまま取引を終えています。
今後も貿易摩擦や米景気への不安が続けば、安全資産とされる円が買われやすくなる展開が予想されます。一方で、市場心理が落ち着けば再び150円台を回復する可能性もあり、重要な節目となる148円台後半~149円付近がサポートになるか注目されます。急な変動も起こり得るため、初心者の方は損失リスクを抑えつつ、こうしたボラティリティをチャンスに変える戦略が求められるでしょう。
2. ドルストレート(ドルスト)の動向:主要なドルストレート通貨では、この日ドル安の流れが広がりました。ユーロドル(EUR/USD)はウクライナ情勢の改善期待もあって上昇し、前日比約0.9%高の1ユーロ=1.0468ドルまで値を伸ばしています。
欧州各国がウクライナ支援や防衛費増強に動くとの報道も将来の欧州経済への楽観材料となり、ユーロを下支えしました。また、米ISM製造業PMIの低下でドル全体が弱含んだこともユーロ高の追い風となりました。
ポンドドル(GBP/USD)も同様にドル安に沿って堅調に推移し、1ポンド=1.20ドル台後半へと上昇しています(※前日比で約0.4%のポンド高と推定)。一方、トランプ政権の関税措置が直撃したカナダドルやメキシコペソは対ドルで売られ、例外的にドル高となりました。
全体としてドル安基調でしたが、通貨ごとに材料が異なり強弱が分かれた点が特徴的です。初心者の方は、ドルストレート通貨ペアごとの動きにも注目しておくと、ドルの強弱変化を捉えた取引機会を見出しやすいでしょう。
3. 米国金利(利回り)動向:米国債利回りはこの日低下しました。長期金利の指標である10年物国債利回りは一時4.168%と昨年12月以来の水準まで低下し、終盤では前日比▲4.9bpsの4.18%で引けました。これは米ISM製造業指数の弱さなどを受け、景気先行きへの懸念から安全資産の米国債が買われたためです。長期金利の低下により日米金利差拡大への思惑が後退し、ドルの上値を抑える要因となりました。また、市場では米連邦準備理事会(FRB)が年内に利下げへ転じるとの観測が強まっており、年末まで合計0.67%(67bps)の利下げが織り込まれ始めています。これは従来の0.5%未満という予想から大きく拡大したものです。実際、米セントルイス連銀のムサレム総裁も「消費や住宅指標の弱さが成長リスクになりうる」と述べるなど、足元の経済減速に警戒感を示しました
。金利低下は今後のドル安要因となり得るため、為替トレーダーにとっては注視すべきポイントです。金利動向に敏感な相場では、初心者も経済ニュースやFRB高官の発言をチェックすることでトレンドを先読みするヒントになります。
4. 主要経済指標の発表と市場への影響:3月4日前後にはいくつか重要指標が発表され、市場に影響を与えました。中でも米国の2月ISM製造業景況指数は50.3と前月の50.9から低下し、市場予想(約50.6)を下回る弱い結果となりました。製造業の新規受注や雇用が50を割り込んだことから、景気減速懸念が意識され、発表直後にダウ平均株価は下落へ転じています。これに伴い為替市場でもリスク回避の動きが強まり、ドル売り・円買いの圧力が高まりました。加えて、この日発表された米1月建設支出も前月比▲0.2%と小幅減少となるなど、経済指標の軟調さが目立っています。
こうした一連の弱い指標結果を受けて、投資家は今週末(3月7日)発表の米雇用統計に注目しています。雇用統計は景気の基調を左右する最重要指標であり、もし労働市場の弱さが確認されれば「景気後退への不安が一段と高まりかねない」状況です。反対に予想を上回る強い雇用者数増加が示されれば、市場心理が好転しドルの下支え要因となる可能性もあります。
初心者の方も経済指標カレンダーをチェックし、指標発表前後の相場変動に備えることで、有利なエントリー機会を狙うことができるでしょう。
5. ファンダメンタル要因:為替相場に影響を与えた根底のファンダメンタルズ要因として、米国の通商政策と地政学リスクが挙げられます。トランプ米大統領はカナダとメキシコからの輸入品に対し3月4日付で25%の追加関税を課す措置を発動し、中国製品への関税も従来の2倍となる20%に引き上げました。さらに日本や中国が通貨安誘導を続けるなら「米国は不利になる」として関税引き上げを示唆する発言も行い、市場に衝撃を与えています
。これら保護主義的な政策により貿易戦争への警戒感が高まり、リスク回避姿勢から円やスイスフランなどの安全通貨が買われやすくなりました。
一方で、米国と貿易関係の深いカナダドルやメキシコペソは売り込まれ、対ドルで約1カ月ぶりの安値水準に沈んでいます。実際、メキシコペソは対ドルで2月3日以来の安値を記録し、カナダドルも1カ月ぶり安値圏まで下落しました。一方、地政学リスクの緩和要因も見られました。欧州ではウクライナ和平合意への期待が高まったことで投資家心理が改善し、ユーロなど欧州通貨の支援材料となりました。さらに各国政府・中央銀行からの発言も相場の手掛かりとなっています。日本では財務省の幹部が「円安による輸入物価上昇が実質賃金に与える影響」を懸念すると発言し、当局が過度な円安を警戒している姿勢が示唆されました。このため市場では「円安にも限度がある」との見方が広がり、円売りポジションの調整(買い戻し)につながった面もあります。同様に米国でも地域連銀総裁が相次いで景気減速リスクに言及し始めており、将来的な金融緩和への思惑からドルの上値を抑える要因となりました。総じて、政策発言や国際情勢の変化がダイレクトに為替レートに反映された一日であり、今後もこれらファンダメンタルズ要因の行方には注意が必要です。
6. 本日(2025年3月5日)は、以下の経済指標の発表が予定されています。これらの指標は為替市場に影響を与える可能性があるため、注目が必要です。
オーストラリア 第4四半期GDP(9:30発表予定):前期比+0.5%、前年比+1.2%が予想されています。
中国 財新サービス業PMI(10:45発表予定):前回値51.0に対し、今回予想は50.7です。
スイス 消費者物価指数(CPI)(16:30発表予定):前月比+0.5%、前年比+0.2%が予想されています。
ユーロ圏 サービス業PMI(確報値)(18:00発表予定):前回値50.7に対し、今回予想も50.7です。
米国 ADP雇用統計(22:15発表予定):前回18.3万人増に対し、今回は13.3万人増が予想されています。
米国 ISM非製造業景況指数(24:00発表予定):前回値52.8に対し、今回予想は53.0です。
これらの指標の結果は、各国の経済状況を反映し、為替市場に影響を及ぼす可能性があります。特に、米国のADP雇用統計やISM非製造業景況指数は、米ドルの動向に直結するため、注目度が高いです。