最近、自宅から気軽に始められる副業としてFXが注目されています。海外に拠点を持つFX会社でトレードを行う場合、日本のFX会社と異なる点が多数あるので注意が必要です。
そこで今回は、海外FX利用者の確定申告における手順や必要書類について解説します。確定申告をスムーズに完了させてFXトレードに集中できる環境を整えましょう。
海外FXで確定申告の対象となるのは?
海外FXの確定申告について重要なポイント3つをお伝えします。
海外FXの利益がマイナスの場合は確定申告は不要
海外FXの利益が1円以上発生すると住民税の支払いが必要
(給与所得者は確定申告することで住民税の納付書の送付先を会社から自宅に変更可能)
海外FXの利益が一定金額以上になると所得税の支払いが必要なので確定申告が必須
上記3について、専業・副業にかかわらず海外FXで一定額以上の利益を得た場合には自分自身で所得を確定申告する必要があります。対象者を以下の表にまとめます。
給与所得者 | サラーリーマン、アルバイト、パートなど | 年間所得20万円以上 |
非給与所得者 | 専業主婦、専業トレーダーなど | 年間所得48万円以上 |
給与取得者(サラリーマンなど)
給与所得者は、年間所得20万円以上であれば確定申告が必要です。
海外FXの年間所得が20万円未満であっても、他に副業収入があり合算で20万円以上となる場合はやはり確定申告が必要となります。
所得の合計額で対象となるか判断するため、海外FXの利益が年間20万円以上であっても書籍やセミナー代などの経費が引かれて20万円未満となれば確定申告は不要です。
非給与取得者(自営業や主婦など)
非給与所得者は、基礎控除48万円以上の年間所得があれば確定申告が必要です。
給与所得者と同様に、他の副業収入や海外FXに関する経費があれば合算し、48万円以上となるかしっかり確認しましょう。
海外FXの確定申告する際の注意点
海外FXの確定申告における注意点が5つあります。確定申告の専門用語が多数でてきますがどれも重要な内容です。ひとつずつ確認し確定申告で間違えないようにしましょう。
国内FXと海外FXは税金の計算方法が異なる
国内FXの税金は「申告分離課税」なので、給与所得などは関係なく国内FXの利益のみに課税されます。利益の金額によらず税率は一律20%です。
一方で海外FXの税金は「総合課税」なので、給与所得などの他の所得と、雑所得である海外FXの合計金額に応じて税率が5〜45%の間で変動します。海外FXの場合は利益が大きくなるほど税金も増えるのです。
所得が多くなると税率が上がる課税方式を累進課税と呼びます。国税庁のHPより、所得額と累進課税の税率・税金が確認できます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円から1,949,000円まだ | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796.000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
海外FX以外に給与所得や不動産所得など利益源が多い方は注意が必要です。
納税するのは実際に所得が発生した翌年になるので、納税に必要な金額は確実に残しておきましょう。納税できなかった場合はペナルティとして追徴課税が発生し、本来納めるべき税金よりも高額の支払いが必要となります。
海外FXの確定申告は損失繰越ができない
確定申告には損失を翌年以降の3年間以内に繰り越せる「損失繰越」という制度がありますが、海外FXには適用されません。
国内FXの場合は昨年の損失と今年の利益を相殺できるため、課税対象の所得額を減らし節税に繋げることが可能です。
しかし、海外FXの場合は損失繰越ができないため、経費を増やすなど別の方法で節税対策を行う必要があります。
ちなみに、総合課税の雑所得同士であれば損益通算できるため、海外FXの利益と他の副業の損失の合算が可能です。雑所得に分類される副業は、仮想通貨取引、ブログ、アフィリエイト、転売、ハンドメイドの物販などがあります。もし海外FX以外にも副業をしているのなら、利益と損失を相殺して税金の支払い額を減らしましょう。
海外FXのボーナスには税金はかからない
海外FXの取引を開始するとさまざまなボーナスを取得できますが、出金できないため税金はかかりません。
海外FXの口座を新規で開設すると口座開設ボーナスがもらえます。また、口座の入金額に応じて受け取れる入金ボーナスなどもあります。これらのボーナスは初心者が無料でFXトレードを体験するためのものなので出金できません。ボーナスを取得しても確定申告は不要です。
なお、ボーナスを使用して得た利益は出金できます。こちらは確定申告が必要なので注意しましょう。
サラリーマンの副業海外FXは住民税でバレる
サラリーマンの住民税は、会社が給与所得を基に計算し、本人の代わりに納付しています。海外FXで利益が出ると住民税が増えるため、納付書が会社に届くと海外FXによる副業収入の存在に気付かれるかもしれません。
サラリーマンが会社にバレずに海外FXを行うためには、確定申告の際に住民税の納付方法を特別徴収から普通徴収に切り替える必要があります。「確定申告書第二表」の「住民税・事業税に関する事項」の「自分で納付」の欄に〇をつけて確定申告書を提出すれば変更可能です。
普通徴収にした場合、確定申告による所得税の申告と副業収入による住民税の納税は自分で行います。
本業の給与所得に課税される住民税は今まで通り会社が特別徴収で支払うので問題ありません。
経費計上には領収書が必須
海外FXで利益を出すためにかかった費用は必要経費として計上できますが、確定申告のときに領収書が必要です。税務署に提出する必要はありませんが、確定申告が完了した後も7年間は保管しましょう。紙保存より電子保存が本格化しているので、領収書はスマホなどで撮影しデータで保管するのがおすすめです。
海外FXで経費となるものに以下があります。
- パソコン等の設備費
- インターネット通信費
- ソフトウェア代
- 書籍代
- 事務用品費
- 家賃や光熱費の一部
- セミナー受講費用
- 交通費
- 情報入手のための費用(トレーダー仲間との食事の費用など)
海外FXの取引で発生した費用であれば食事代なども計上可能です。
なお、パソコンなど10万円以上のものを購入した場合、減価償却と呼ばれる複数年に分けて経費計上する方法で確定申告が必要となります。
海外FXは税率が高いので、経費を忘れずに計上し税金の支払いを減らしましょう。
海外FXの確定申告の必要書類
海外FX利用者の確定申告に必要な書類は以下です。
- マイナンバーカード(※)
- お勤め先から受け取った源泉徴収票
- 必要経費の領収書
- 海外FXの年間取引報告書
- 所得控除の証明書(生命保険料控除など)
(※)マイナンバーカードがない場合は、通知カードやマイナンバーの記載がある住民票の写しと、身分証明証(運転免許証など)で対応可能
所得控除の証明書は、お勤め先の年末調整で提出している場合は不要です。
マイナンバーカードや身分証明書
確定申告書にはマイナンバーの記入欄があるため、マイナンバーカードの準備が必要です。マイナンバーカード未発行の方は、通知カードに記載されているマイナンバーを確認しましょう。通知カードが手元にない場合は、役所の窓口に身分証明書を持参しマイナンバー入りの住民票を発行すれば大丈夫です。
お勤め先から受け取った源泉徴収票
確定申告書を記入するとき、源泉徴収票に記載されている金額を転記する必要があります。サラリーマンなど給与所得者は、お勤め先から毎年12月頃に渡される源泉徴収票をなくさずに保管しておきましょう。
源泉徴収票は確定申告書への添付は不要です。
必要経費の領収書
前述の通り、確定申告で経費を計上する場合は領収書が必要です。税務署に提出せず自宅で7年間保管するため、スマホで領収書を撮影し写真データとして保存するのがおすすめです。紙のまま領収書を保管する場合は日付順にファイルをまとめておき、万が一税務調査が入ってもすぐに領収書を探せる状態にしておくと良いでしょう。
海外FXの年間取引報告書
年間取引報告書は、海外FXの損益が記載された報告書です。2024年2月16日から3月15日の間に確定申告を行う場合、2023年1月1日から12月31日までの1年間のFXトレード履歴が必要です。
年間取引報告書はMT4やMT5から以下の手順でダウンロードできます。
- 1.MT4では「表示」→「ターミナル」へ、MT5では「ツールボックス」へ移動
- 2.「口座履歴」タブで右クリックして「期間のカスタム設定」をクリック
- 3.ダウンロードしたい期間を入力
- 4.「口座履歴」画面上で右クリックして「レポートの保存」をクリック
海外FXの利益は確定申告書の雑所得(その他)の欄に記入します。
確定申告の際に年間取引報告書を提出する必要はありません。ただし、確定申告の内容に不自然な点があった場合、税務署に説明できるよう保管しておきましょう。
海外FX口座で得た利益の確定申告のやり方・方法
ここから海外FXを利用した場合の確定申告の方法を説明していきます。
確定申告・税金の納税方法には以下の4つの方法があります。
- 税務署で確定申告する
- 国税庁のHPから確定申告する
- 会計ソフトで確定申告書を作成する
- 税理士に確定申告を依頼する
税務署で確定申告する
まず初めに、税務署や確定申告会場で申告書を作成して提出する、昔ながらの方法を紹介します。
確定申告について職員の方に直接会って質問したい方におすすめです。税金の計算などを教わることができます。
ただし、確定申告時期は税務署が非常に混雑します。時間に余裕を持って向かいましょう。
また、必要書類や電卓や認印などの一式を忘れないようにしましょう。
国税庁のHPから確定申告する
次に国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用する方法を紹介します。こちらのツールを利用すると必要事項(収入など)を記入するだけで税金を自動で計算してくれます。パソコンやスマホなどインターネット環境があれば誰でも確定申告できるので、一番おすすめの方法です。
会計ソフトで確定申告書を作成する
市販の会計ソフトで税金の計算を行い、確定申告を行うことも可能です。税金の計算だけでなく海外FXの利益や経費をまとめて管理できます。
会計ソフトの確定申告書作成画面で雑所得(その他)の欄に海外FXの利益や経費を記入しましょう。
税理士に確定申告を依頼する
税理士に依頼して利益や税金の計算・確定申告をしてもらうことも可能です。費用は高いですが書類の書き方、税金の計算方法などをお任せし、確実に確定申告したい方におすすめです。確定申告の作成は時間がかかるため、税理士に依頼することで本業に専念できます。適切な節税方法についてもアドバイスしてもらいましょう。
確定申告が不要の場合
ここまで、海外FX利用者で確定申告が必要な方および手順について解説しました。
海外FX利用者で確定申告が不要な方を以下にまとめます。
給与取得者(サラリーマンなど)
給与所得者は、海外FXの年間所得が20万円未満であれば確定申告は不要です。
ただし、他に副業収入があり合算で20万円以上となる場合は確定申告が必要となります。
所得の合計額で対象となるか判断するため、海外FXの書籍やセミナー代などの経費が引かれて20万円未満となれば確定申告は不要です。
非給与取得者(自営業や主婦など)
非給与所得者は、海外FXの年間所得が48万円未満であれば確定申告は不要です。
給与所得者と同様に、他の副業収入や海外FXに関する経費があれば合算し、48万円未満となるかしっかり確認しましょう。
海外FX確定申告まとめ
海外FX利用者の確定申告は国内FXと異なる点が多く、注意点がたくさんあります。必要書類をまとめ、手順をしっかり確認し、効率よく確定申告を行いましょう。
海外FXに限らず、副業を行う人にとって税金や確定申告に関する知識を身に付けることはとても重要です。FXトレードやその他の副業に集中するためにも確定申告の疑問点は早めに解消しておきましょう。